MEPCの臨時会合(MEPC/ES.2)での交渉後、状況が落ち着いたことを受けて、今号のカウントダウンではその主要な動きを振り返ります。本会合では加盟国によってIMOネットゼロ枠組(IMO NZF)の採択決定が行われることが期待されていましたが、この決定は1年間延期されることが票決されました。この翌週には各代表がISWG-GHG 20で関連ガイドラインについて協議し、IMO NZFについての作業を続けました。
センターの専門家は両会合のためロンドンに赴き、燃料認証に関する私たちの取り組みを紹介するとともに、IMO GFIレジストリ、LCA、 zero and near-zero 排出エネルギー源に対するインセンティブなどに関する議論に参加しました。
現地からの見解
10月にロンドンで開催されたMEPC会合は、名ばかりではなく、まさに特別な会合でした。4月にIMO NZFが圧倒的多数で承認されて以降
採択には、投票資格を持つ加盟国のうち3分の2の賛成が必要であり、つまり3分の1の強い反対があれば枠組が決定的に損なわれる可能性もありましたが、そのような事態にはなりませんでした。今回の延期によって得られた追加の時間は、不確実性の解消およびガイドラインの改善を共同で進めるために活用できるものです。すでに、その翌週の会期間作業部会にてその作業が進められ、同部会では非常に建設的な議論が行われました。
Christian Føhrby
Government Affairs Manager
世界で大きな割合を占める船主およびオペレーターを代表する各産業団体からは、IMO NZFに対する強い支持が示されました
Joe Bettles
Climate Policy Manager
MEPCにおいて、一部の加盟国はIMO NZFの主要要素を示すガイドラインの現行案に懸念を示しました。ガイドラインのさらなる明確化と詳細化を求めるこうした意見により、共通理解を確保し、合意形成に向けた前進を促すための改善の重要性が浮き彫りになりました。センターは、専門知識の提供およびこれらのガイドラインの継続的な策定への貢献を通じて、このプロセスを支えていきます。
Daniel Barcarolo
Head of Regulatory Affairs
センターは燃料認証に関する非公式グループを共同調整しており、その成果はIMOで高く評価されました。このグループのガイドライン案は、認証に関する今後の作業の基礎となります。また、ウェル・トゥ・タンク排出量に重きを置いた燃料ライフサイクルラベルのテンプレート案も好意的な評価を得ており、今後さらに構築を進める予定です。これらに加え、センターは今後もIMOのLCA枠組および短期措置の審査の発展のため、知見提供を続けていきます。
Francielle Carvalho
Regulatory Affairs Manager
会合後の見解:IMO NZF各要素の進展
IMO NZFがGHG排出量を抑制し、公正なエネルギー移行を後押しすることを目的とした規制である点を踏まえれば、これは単純な枠組ではありません。最近の会合で、IMO NZFの要素の一部は他の要素より進展していることが明らかになりました。ここでは、最も成熟している要素、および加盟国間でさらなる検討および調整が必要な要素について、私たちの見解を紹介します。
IMO GFIレジストリ
HG燃料強度(GFI)レジストリは、余剰ユニットの付与および移転など、船舶のGFI関連取引を記録するためにIMOが管理するシステムです。このレジストリ実現に向けた最近の進展としては、パイロットプログラムの開発に向けた加盟国のコミットメントおよびIMO事務局による設立準備作業の開始などがあり、2026年4月・5月のMEPC 84で進捗報告が予定されています。船舶の年間登録料を定額とするか段階制とするかについて、加盟国間で意見が分かれています。
GFI報告および検証
IMO NZFの下では、船舶はGFI関連の年間データを旗国に報告し、旗国がそのデータを検証してIMO GFIレジストリに報告することになります。この分野では、報告手順を示す文書およびIMOの既存データ収集システムとの整合に関して、加盟国間で大きな一致が見られます。関連する船舶エネルギー効率管理計画(SEEMP)の改正はISWG-GHGによって策定される予定です。
GFI計算
船舶は、年間の達成GFIを算定するために使用されるデータを記録および提出することになります。この分野では、太陽光、陸電、風力などの特定技術を使用する際にGFIを「燃料等価量」または「有効エネルギー」のどちらに基づいて計算すべきかという点が未解決の問題となっています。これらの技術は燃焼を伴わず推進エネルギーを供給するため、規制当局は、同等の出力を生み出すために必要となる燃料量に基づいて(「燃料等価量」)GFIを計算するのか、または船舶に供給された実際のエネルギー量に基づいて(「有効エネルギー」)GFIを計算するのかを決定する必要があります。
燃料認証
海運燃料は、排出削減目標を満たしていることを確認するために認証を受ける必要があります。IMOが使用する堅牢な燃料認証制度の構築に向けて、加盟国間では大きな一致と顕著な進展が見られます。一部の技術的詳細についての議論は継続中です。
ZNZ報奨メカニズム
IMO NZFの草案によれば、ゼロまたはニア・ゼロ排出技術、燃料、およびエネルギー源(ZNZ)を使用する船舶はIMOネットゼロ基金からの「報奨」の対象となります。しかし、ZNZの報奨方法の詳細については、追加の適格基準、対象技術、支払いメカニズム、報奨のタイミングなど、さらなる検討が必要です。ISWG-GHG 20での議論では、ZNZ報奨が加盟国にとって重要である一方で、多くの国が明確な立場を取る前にさらなる情報および分析を必要としていることが明らかになりました。ZNZ報奨はISWG-GHG 21でも重要な議題になると見込まれており、センターも注意深く追跡し、貢献していく予定です。
IMOネットゼロ基金
IMOネットゼロ基金には、2つの明確な目的があります。ZNZの利用に報奨を与えること、および公正かつ公平な移行を支援することです。同基金については、ガバナンス規定や、インフラ、研究開発、能力構築、食料安全保障への影響など幅広い分野に対してどのように資金を配分するかなど、多くの側面がまだ定義される必要があります。これはIMOにとって最も複雑な作業の一つであり、公正および公平な移行のための基金創設に反対する一部加盟国の存在によって、さらに複雑さが増しています。ネットゼロ基金の設計を導くため、IMO事務局は類似基金の比較分析に着手する予定です。
ご質問への回答:MEPC/ES.2の結果は実務的に何を意味するのでしょうか?
Q: IMO加盟国は1年後にまったく同じIMO NZF提案に対して投票することになるのでしょうか?
端的に言えば、そのとおりです。現時点での私たちの見解は、MEPC/ES.2の休会によって改正MARPOL附属書VI案(すなわちIMO NZF)の採択決定が事実上保留されており、MEPCが再開された際に同じ改正案が採択対象として審議されることになる、というものです。したがって、現行案は大部分がそのまま維持されると見込んでいます。ただし、この遅延に対応するため、たとえば2027年に設定されている期限を2028年に変更するなどの具体的な日付の修正が必要となります。このような軽微な更新は、2026年10月にMEPCが再開された際に、起草グループによって完了できると考えられます。
Q: 現行の提案の他の部分は、協議および再交渉の対象となるのでしょうか?
私たちの理解では、可能性はあるものの、その見込みは低いと考えられます。規制の実質的内容(例:Z係数の調整やレメディアルユニット値の変更)について協議または再交渉を行うには、相応の時間を要すると考えられます。IMOにおける規制改正は、関連条約、すなわち本件ではMARPOLに従う必要があり、同条約は附属書の改正に関して明確な手続きを定めています。したがって、実質的な変更には、採択を決定する前に、MARPOL第16条2(a)に従い6か月の検討期間が必要となります。
現時点から2026年10月までの間にMEPC会合は一度しかないため、現行版の採択決定前にIMO NZFの実質部分を再検討する機会は限られると見込まれます。現行の枠組案は、複数年にわたるプロセスを経て多数の加盟国が一つの文書に合意することで形成されたものです。したがって、より広範な支持を得られるような実質的に異なる案が示されることは考えにくい状況です。
Q: 延期はIMO NZFの発効にどのような影響を与えるのでしょうか?
IMOの黙示承認方式の下では、改正の採択から承認まで少なくとも10か月を経る必要があります。IMO NZFが2026年10月に採択された場合、2027年8月までに承認、2028年に発効、そして初回の報告期間は2029年となる可能性があり、これは以前の見通しと比較して約1年の遅れに相当します。
Q: IMO NZFの採択決定は、来年再び延期される可能性があるのでしょうか?
MEPCの議事規則には、加盟国が再度会合の休会動議を提案することを明確に禁止する規定は、私たちの知る限り存在しません。しかし、この点について明確な答えを得るには、これらの規則をさらに精査する必要があると考えています。
Q: これは、IMOが産業界の脱炭素化およびGHG排出削減に取り組まなくなることを意味するのでしょうか?
いいえ。IMOは2023年船舶GHG排出削減戦略を全会一致で採択しており、MEPC 83で合意されたIMO NZFも否決されたわけではありません。IMO NZFの採択決定は延期されたものの、短期措置や新燃料の安全性に関するIMOの作業は継続しており、燃料認証、ZNZ報奨、およびLCAを含むIMO NZFガイドラインの作業も同様に進んでいます。これらのガイドラインによって追加的な確実性を高めることは、明確性の不足に関して加盟国から示された懸念への対応に役立ちます。また、追加の時間は、業界がGHGに関するグローバルスタンダードの利点を加盟国へ伝える機会を広げることにもつながります。
IMO NZFを超えた持続可能な投資のためのセンターのリソース
センターは今後1年を通じて、IMO NZFが国際海運の脱炭素化に向けた最も明確な機会であることを示していきます。発効までのカウントダウンが続く中、企業は移行に向けたビジネスケースを構築するために追加の選択肢を活用できます。
Katalistは、センターおよびRMIが共同開発したブックアンドクレーム型のラットフォームで、持続可能な燃料を使用する海運企業と、プレミアムを支払う意思のある購入者をつなぎます。こちらからニュースレターに登録できます。
EU域内で事業を行う企業にはEU ETSおよびFuelEUが引き続き適用されており、持続可能な船舶および燃料への投資を促すビジネスケースが形成されています。これらの政策について詳しくは、FuelEU Knowledge Hubをご覧ください。政策の理解およびコンプライアンス戦略の構築に役立つ資料を提供しています。
著者: Matilda Handsley-Davis with contributions from the Regulation & Policy Hub
